彼氏がいなくたって、いいじゃない?

 ゲイっていうのは、マイノリティに分類されているが、実は最先端のライフスタイルを取り入れることができる恵まれたポジションでもある。そもそも結婚しなければならないという価値観からどう距離を置くかを考えてきたし、その結果、子育てをどうするかも考えなくてよい。身軽でいられるというのは、今の時代においてはメリットだ。

選択的シングルに書いてあった面白かったこと

 先日、「『選択的シングル』の時代」*という本を読んだ。うすうす、そうじゃないかと思っていたことがズバリ書いてあって、とても面白かった。以下が面白かったポイントである。

  • 世界中で、結婚しない人が増えている。
  • 結婚した人の幸福度のピークは結婚の時で、2年を経過すると、単身時代と同じ幸福度に下がる。
  • 離婚すると、幸福度は大きく下がり、時間をかけても独身時代のレベルまでは回復しない。
  • 結婚して幸福度が下がるのは、配偶者に配慮して、社会的な繋がりが狭まるからである。
  • シングルの人は大きく2種類いて、自分の意志でシングルでいる人と、結婚したいが相手が見つからずシングルでいる人だ。
  • 自分の意志でシングルでいる人は、自分なりの人のつながりの中で暮らしており、幸福度は、結婚している人よりも高い。

要するに、結婚しない方が幸せだっていうのだ。

老後の心配

 結婚したい動機の一つは、老後にひとりぼっちで過ごしたくないということである。選択的シングルで指摘されているが、結婚したからといって、二人とも健康に寿命をまっとうできるか分からないのだから、老後のために結婚するのは意味がない。これに対し、積極的にシングルでいる人は、人との繋がりを築いており、ひとりぼっちからは程遠いところにいる人が多いとのことだ。

 これは、そのままゲイにも当てはまる。おすぎさんとピーコさんが一時期、週刊誌に書かれていた内容というのは、そのままゲイカップルが老々介護をしなければいけない可能性を示している(彼らはカップルではなく双子であるが)。

セックスレスと浮気

 自分が出会ったゲイの人の大半が彼氏持ちだったが、長いお付き合い(数年以上)をしているカップルは、だいたいセックスレスである。(逆に言えば、セックスレスだから、自分とセックス目的で出会っただけかもしれないが。)

 そして、そうやって自分と会う行為は、一般的には浮気である。自分が会った彼氏持ちさんはほとんどが、「(自分がしているとの同じように)彼氏も浮気していると思う」と話してくれるし、「自分にバレないようにしてくれたら、彼氏が浮気するのは問題ない(し、自分もバレないようにしている)」と考えている人が多い。

 自分は浮気しているけど、彼氏はしていないと教えてくれる人も一定数いる。彼氏が浮気をしていない理由の根拠としては、セックスに対して淡白だからというのが多い。

 ナインモンスターズの登場が2011年。そこから10数年の間に、新しい人に出会うハードルは、格段に下がった。今までできなかったことが簡単にできるようになったのだから、そうしたテクノロジーの進化に感謝すればいいのではないか?

やりたいことを正直に言える関係

 「選択的シングル」で指摘されていたポイントだが、婚姻によって、交友関係が狭まることに注目したい。今でこそ、オープンリレーションシップという言葉が登場しているが、21世紀が始まった頃はまだ、ゲイであることをカミングアウトすることすら大変な時代だった。そして男女と同じく、「カップルは添い遂げるべき」という価値観がゲイカップルでも一般的だった。だから、その時代からお付き合いしているカップルというのは、相手に忖度しながら、自分のやりたいことを、時間を見つけてうまくやりくりしている感じがする。

 でも、これからお付き合いを始めるカップルは、新しい価値観でお付き合いを始めてもいいのではないだろうか?新しい価値観というのは、自分のやりたいことも、彼氏との幸せのどちらも手に入れちゃうって言う欲張りな価値観だ。

 実はこれは結構難しくて、相手のやりたいことも同様に認めてあげなきゃいけない。試しにやってみると分かるが、これは本当に難しい。彼氏って言ったって、所詮は赤の他人である。自分の価値基準ではダサいこと、イヤなことを彼氏がやりたいと言った時、素直に「いいね、応援するよ」と言えるかどうか。素直に言える人は、彼氏も自分のやりたいこともどちらも手に入れられる人だ。

ゲイに生まれた自分の人生を楽しむ

 人生100年時代、単に彼氏を見つけて一緒に暮らすだけでは、この長い人生を終えるには、長すぎる。友達関係も同様だ。昔、仲良かった友達が今でも同じように仲良くいられるわけではない。だからこそ、彼氏以外の人の繋がりも大事になる。そして、もう一つ大事なのが、生きるモチベーションだ。やりたいことがあるっていうのは、生きる原動力になる。

 自分の人生を振り返ってみると、多かれ少なかれ、ゲイであることで苦労したことがあると思う。だからこそ、未来はもっと楽しんだらいいと思う。幸いにも、時代はゲイである我々に味方してくれている。彼氏がいるから幸せとか、いないからかわいそうとか、そういう古い価値観とは別の、自分なりの価値基準で、自分なりの楽しんだらどうだろうか?

 最後に、自分のことを立ち止まって考えるきっかけの言葉を書いてみる。「その我慢、いつまでするの?」

*「選択的シングル」の時代 30カ国以上のデータが示す「結婚神話」の真実と「新しい生き方」, エルヤキム・キスレフ (原著), 舩山むつみ (翻訳), 文響社, 2023

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です